ネーミングのコツ
1、ネーミングとは
一言でネーミングと言っても、子供に名前をつけることも、友達にあだ名をつけるのもネーミングと言えます。
ただ、このサイトで訴求したいのは、企業や製品、ブランドやサービスなど
物事に名前をつけることに限定したいと思います。
とは言え、先ほどもご説明したように、言って見れば名付け親になるわけですから、
そこには様々な思いや願いを込めていくことは子供に名前をつけることとよく似ています。
名前をつける対象がどんな人に愛されたいのか、どんな風に育って欲しいのか、
競合はどんな存在なのかをじっくり見極め、
ターゲットとなる人々の心に深く刺さるものでなければなりません。
2、ネーミングとキャッチコピー、
どっちを大事にしてますか?
みなさん、意外とネーミングを軽視しがちですが、そこには深い戦略が必ず隠されています。
というのも、そのモノやコトのコミュニケーションの起点となるからであり、
それがベースとなってキャッチフレーズや雑誌や新聞、テレビなどの広告表現につながっていくからです。
ネーミングは誰でも作れる分軽視されがちですが、
かなり練りこんだネーミングを作らなければ必ず後悔することになります。
しかも、ネーミングは特性上、商標登録が可能です。
類似したネーミングですとユーザーの混乱や信用が落ちる可能性があるため、商標登録で守る制度があります。
登録するには、そこそこの費用がかかりますし、
せっかく覚えてもらったネーミングを簡単に変えてしまうのは
そこまでのコミュニケーションが水の泡になってしまいます。
ただ、ここのところ、あまりにもネーミングの登録が多くなったことから、登録が難しくなっています。
そこでキャッチフレーズ的にネーミングをしてしまうという方法も出てきているのは事実です。
3、売上に直結するネーミング。
ネーミングは、常にターゲットの近くで声を大にしてアピールしてくれます。
ですから、できるだけターゲットの心に刺さるネーミングをつけなければ損です。
かっこだけつけたり、おしゃれなだけであったりしてしまっていては、ターゲットの心に刺さりませんし、
せっかく手に取ろうとしている消費者が手をひっこめてしまいます。
ネーミングによって売上は大きく変わるのです。
例えば、保湿ティッシュの「鼻セレブ」は、
以前「ネピアモイスチャーティシュ」という商品名で販売されてました。
「ネピアモイスチャーティシュ」時代は、ユーザーから使用感や高級感で高い評価を得てましたが、
注目されず競合他社商品に埋もれておりました。
現状打破のためネーミングとデザインを一新。
「しっとりふわふわ」「やわらかい」などの商品イメージより、
名称を「鼻セレブ」にし白くてふわふわした動物のパッケージに変更されました。
リニューアル後の売り上げは
『ネピアモイスチャーティシュ』の10倍以上になり、
ユーザーに人気の商品となりました。
このように、ブランドネームは
「名は体を表す」ことを強く意識する必要があります。
セレブという贅沢なイメージから
鼻へのソフトな肌触りを連想させるように、
ネーミングはユーザーの感覚・製品イメージ・覚えやすさが大切なのです。
4、ネーミングに必要なセンス。
大変残念なことにネーミングは、センスが必要です。
しかし、それは既にみなさんがお持ちのセンスで十分です。
大切なのは、そのモノやコトを子供のように思えるかどうかなんです。
メーカーの方などは特に新製品への思いははんぱじゃないはずです。
しかし、ネーミングとなるとなぜか別の作業のように思われるようで、
なかなか積極的に筆がすすまないようです。
10ヶ月お腹の中にいて、ようやく出会えた子供と思ってください。
そしてどんな人間になって欲しいか、そのためにどんな友達と出会って欲しいか。
独立(消費者の手に渡ってから)してから、
どんな風に消費者の方や社会に役立って欲しいのか。
そんな風に想像するセンスさえあれば、いろんな方向性が見えてくるはずです。
ただ、ここでもう一つ大事なセンスがあります。
それは、選ぶセンスです。
これはかなりいろんな経験を繰り返していかなければ、なかなかいいネーミングを選ぶのは難しいでしょう。
そういったことからも、ネーミングについて相談できる方を探したり企業に依頼することもおすすめです。
プロだからこそ、客観的な視点と豊富な経験から導き出し
認知度が向上するネーミングをつけることができます。
5、ネーミングのコツ
何度も言いますが、ネーミングのコツは、そのモノやコトを子供のように愛してください。
そして
社会や購入者にどんな風に役立って欲しいか、
どんな場所に置かれて大切にされたいかなどを想像することからはじまります。
・コンセプトを作る
コンセプトと言うと堅っ苦しくまた難しいように思えますが、
大切なのはどんな風に育って欲しいか明確なイメージを持つコトです。
例えば、競合他社の製品と真っ向勝負できる商品になって欲しいのか、
おしゃれさで選ばれたいのか、
機能で選ばれたいのか、逆にユーザーからどんな風に見られたいのかを
イメージしながら最もユーザーに手を取ってもらえるアプローチを一つに絞ります。
それがコンセプトなのです。
例えば、あるシャンプーにネーミングをつけようとします。
それはしっとりふわふわの泡で、シャンプーした後も髪のいい状態がつづくシャンプーであるとしたら、
次のどちらをコンセプトに設定したらいいでしょうか。
A:しっとりふわふわ泡
B:髪のいい状態がつづく
私はBを選びます。なぜなら、この商品がユーザーの目に映った時、ユーザーの手に渡ってからなどを想像すると、
なぜか近くにかならずたくさんの競合シャンプーが見えてきます。
下手したらユーザーは、お風呂場に二つ三つブランドの違うシャンプーを置いていそうです。
それはおそらく、シャンプーはかなり競合が多く、
そんな状態で大切なのは他と区別しなければいけないという意識が働いたからだと思います。
そこからすると、しっとりふわふわよりも、つづくというのがかなりのアピールポイントになるのではないかと感じたからです。
・アプローチづくり
コンセプトが決まったら、次はアプローチづくりです。
コンセプトを基に3つ、多くても4つのアプローチを考えてみてください。
多少クロスオーバーしてもかまいませんので、機能寄りからイメージ寄りへコンセプトを分解してみてください。
先ほどの例で行けば
コンセプトは「髪のいい状態がつづく」でしたから
アプローチ1:いい状態にする成分
アプローチ2:つづく
アプローチ3:人が振り向く
アプローチに沿って作業をすすめますが、結果的には似たものが出てくるはずです。
できれば、それぞれ30ぐらいずつ、合計100近くは並べてみたいものです。
・トーン&マナー
商品の特徴を把握したら全て伝えたいと思うかもしれませんが、
どんなに素敵な商品でもイメージが湧かないと購買意欲は下がります。
人間はよくわからないものには手を出そうとはしません。
そのため、トーン&マナーを絞る必要があります。
トーン&マナーは案件によって大きく変わりますが、基本的にネーミングとして大事なのはわかりやすいこと。
複雑な名前では覚えられませんし、店頭でそれを読解する時間も消費者にはありません。
ポイントとしては、「小学生でも理解できる」ことを意識すると良いでしょう。
・キーワードを組み合わせる
キーワードを足す、短縮する、逆から読む、語呂合わせなど思いつく限りのことをしてみましょう。
例えば、3.4文字に短縮する手法は耳に残りやすくしたいときにおすすめです。
キーワードを足すときは短めなキーワードと語感が強いキーワードを使用するとちょうどよいイメージになります。
また、接頭語、接尾語を使うと親しみやすいさが醸し出せます。
ちなみに、ロッテ社のヒット商品「コアラのマーチ」は、
マーチングバンドのようにコアラの絵柄のお菓子が出荷される様子を連想したことで、
『コアラ』+『マーチングバンド』=「コアラのマーチ」とネーミングされました。
行き詰った場合は、グーグル検索のサジェストや翻訳機能を使用しキーワードを探すのも良いでしょう。
・ネーミングを第三者に決めてもらう
当事者同士で商品の特徴やキーワードを探す場合、
主観的になってしまうことがあります。
何より普段ネーミングを付けたことがない人からしたら大変な作業と思います。
そんな時だからこそ、第三者に客観的な視点でネーミングを付けてもらうことで、
思いがいけない結果が出る可能性があります。
6、人気商品のネーミング例
撮った写真をその場ですぐ、手軽にアップロードできるサービスから、「Instant」は「即席、その場で」、
「Telegram」は「電報」という意味を掛け合わされております。
・スーパードライ
アサヒビールの商品で日本初の辛口・生ビール。
こちらは、よりキレのあるビールで辛口の味をコンセプトにされているため、
「スーパードライ」と名付けられました。
・ばかうけ
栗山米菓の商品で子供から大人まで人気のお菓子です。
本社がある新潟県の方言で、「ばか」=「すごい」という意味です。
「ばかうけ」が開発された当時、テレビ番組の影響で言葉が流行ったことや
文字通り大ヒットしてほしいという願いを込めネーミングされました。
・YouTube
世界で展開されている動画共有サービスです。
Youは「あなた」、Tubeは「ブラウン管(テレビ)」を表現しており、
個人が番組を作り配信して楽しんで欲しいという思いを込めて名付けられました。
・Evernote
オンラインでメモを保存し、
パソコンやスマートフォンなど様々な端末からアクセスして閲覧・編集できるWebサービスです。
「永久」を意味する「Ever」に「note」を足して付けられました。
補足ですが、Evernoteのロゴマークは象が使用されています。
西洋では象は記憶力が良い動物とされていることが起因です。
7、ネーミングで気を付けること
最後に、商標登録がされていないかは注意が必要です。
せっかく苦労して考えたネーミングも使用できなければ意味がありません。
「特許電子図書館」で必ず検索して登録がされていないか調べましょう。
8、まとめ
いかがでしょうか?
難しいと感じたネーミングが和らいだのではないでしょうか。
上記内容を意識することで斬新なアイデアが生まれますが、コンセプトが伝わることが大事です。
一度つけた商品名を変えるのは難しいため、ユニークさが先行しないように注意も必要です。